雅隆ローラン / ケサランパサラン
M.Rollin / KESARAN PASARAN
1968年生。北海道北見市出身。
原型制作から量産、彩色、パッケージングに販売まですべてを独りでおこない、しかも驚異のクオリティを誇ることで注目を集める異色の造形作家。
元々はデザイン会社に勤務、昼はデザイナー、夜は漫画を描くという二足のわらじを履く。そして漫画は雑誌連載が決定、しかし数話が掲載されたところで雑誌自体が休刊の憂き目にあうことに。さらにデザイン会社の経営も悪化し、脱サラを決断。
……すると彼は、粘土でゾンビを作り、売りはじめた!
凡人には到底行き着かない発想だが、当人にとってはこれで行けると確信に満ちた、当然の流れだったのだそうだ。
1/6サイズのゾンビの頭ばかりを作った「LIVING DEAD HEAD」シリーズは2009年に見事100体(頭?)目を迎えた。
当初より100体制作することは決めていたそうで、開始から6年にして達成したのだ。
そして「LIVING DEAD HEAD」シリーズの続編となる「ホラーヘッド」シリーズも着々とラインナップを伸ばし、1/4スケールのバスト「ゾンゲリアン」シリーズ、さらにミニスケールのバスト「ダークエンパイア」シリーズもスタート。同シリーズに属する「ルイス・キャロルのアリス」をモチーフとした「ALICE in DARK EMPIRE」は、豆魚雷による別注限定版がリリースされ、大ヒットを記録する。
この大ヒットとなった「ALICE in DARK EMPIRE」をはじめ、これまでリリースされたケサランパサランの作品は、前述のとおり工場などは使わない。
他の誰にも頼まずに、すべて一人で量産する。一つ一つ、手抜きは無い。クオリティが異様に高い割に、お値段は控えめ。なにか副業があるわけではなく、ゾンビ製作の一本立てで突き進む。このご時世ながら、ネットでの販売などはしていない。イベント会場で買うか、ハガキ(!)で注文するしかないのだ。どうしてネットで販売しないのか尋ねると、「そういうことに労力を割くより、作りたいものがありすぎるんです。」売れるに越したことはないが、それよりも脳内に溢れるアイデアを具現化するほうに力点を置きたいのだそうだ。それどころか、アイデアを練るという行為こそが彼の創作におけるクライマックスであり、そのあとの「造形」という行為に関しては、「自分がやらなければ、具現化しないので。じつのところ、作ってくれる人がいたら頼んでおわりにしたいくらいです」とすら語る。
ひょっとしたら、彼は生まれる時代が違っていたら高名な芸術家になっていたのではなかろうか? 80年代ホラーの洗礼を受けてしまったばっかりに、“カルト”と”マイナー”という呪いをかけられてしまったのだ!
(テキスト/ 原田プリスキン)
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