山本 翔
Sho Yamamoto
山本翔氏 ロングインタビュー
第1回 2017-02-06 公開
第2回 2017-02-07 公開
第3回 2017-02-08 公開
第4回 2017-02-09 公開
第5回 2017-02-10 公開
PROFILE
1982年、福岡県福岡市出身。
CG会社にデザイナーとして勤務する傍ら、UMAや妖怪、幻獣など、架空の生物の立体作品を制作する粘土造形作家。
美術系の大学にてデザインを専攻、Macを使用したCGアートをはじめとして、学生時代はおもに昆虫など生物をモチーフとした平面作品を制作する。
授業で鑑賞したヤン・シュヴァンクマイエル作品(※1)に衝撃を受けたことをきっかけに、卒業制作課題をストップモーション・アニメにすることを決意。友人に教えられたスカルピー(※2)を用いて登場人物たちを造形し、関節を仕込みコマ撮りで動かした。この一連のプロセスにおいて、「撮影よりも立体物を作るほうが楽しかった」と振り返る。
大学院を卒業後、デザイナーとしてCG会社に就職。2007年より地元・福岡にて大学時代の同期とともにグループ展を開催することとなり、絵画作品のほかに粘土作品を出品することを思い立つ。初期作品は実在する生物―生まれたてのひよこやヌードラット(毛の無いネズミ)など―をモチーフとしたというから、かわいらしさの中に生き物のグロテスクな側面を意識的に取り入れる造形アプローチは当時から一貫していたようだ。
そして造形活動を本格的に開始、独学で技術を習得していく。どんどんその面白さに魅了され、やがて趣味の枠を超え、造形はライフワークと呼べるまでの存在になっていく。
■初期の作品
作品が人目に触れるのは福岡でのグループ展における展示が主だったが、周囲の勧めにより2015年よりワンダーフェスティバルをはじめとする造形イベントに参加し、ディーラーとしての活動をスタート。独特なフォルム、説得力のあるディテール、透明感のある美しい塗装、儚げな空気感。おそろしく高いクオリティの作品が一挙ずらりと並び、(本人にそのつもりはないだろうが)新星作家の登場として一躍全国区の注目を集めることとなった。
幼少時から生物に関心を持ち、『博物館』という存在に強い憧れを抱いていたそうだ。長じてから出会った写真集「写真家 上田義彦のマニエリスム博物誌」(※3)に魅了され、現在の作風、作品が写真に写ったときのイメージに大きな影響を与えていると語る。
オタク的な気質はほとんど感じられず、現在の作風も独自で確立させていったようだ。とはいえキャラクターフィギュアの文脈と無関係とも思えず、個性的で華があり、可愛らしく生々しく、しかし嫌味のない造形をものにできる、唯一無二の作家性。このバランスの良さはいったい何に拠るものなのだろうか? どこまで本人が意識しているのかは謎だが、なにか重大な秘密を握っているに違いない。
造形力、センス、カリスマ性を併せ持つ、今もっとも動向を注目すべき作家のひとりである。
※1 チェコのアニメーション作家、映画監督、シュルレアリスト。多くのストップモーション・アニメの短編、『アリス』『ファウスト』などの長編映画を監督している巨匠。
※2 焼くことで硬化する樹脂粘土。
※3 東京大学の総合研究博物館に眠る、研究用としては役目を終えた学術標本や模型を、写真家・上田義彦氏がアーティスティックなオブジェとして撮影した写真集。
■その他の作品
■関連リンク
【山本翔 Twitter】
【山本翔 粘土造形】(公式HP)
(テキスト/ 原田プリスキン)
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