2.

バンピレラを知るということ

—どういう能力を持っているのでしょうか。

原田これが、凄いですよね。ありとあらゆる……。

朝比奈蝙蝠に変身するっていうのは第1話の冒頭でやっていましたね。

朝比奈あとテレパシーのようなものを使ったりとか、色々と……。

原田今回ですね、どんな能力をこれまで使ったかっていうのをざっくりとまとめたんですけども。

朝比奈二つ目の不死身というので、すでに最強ですよね。

原田プラス自己治癒があるし、超人です。銃器に精通というのがわりと意外かもですが、結構近代的な武器を使って、両手に銃を持ってる絵なんかも見かけます。

朝比奈割と最近になってですかね。あと格闘技に長けてるというか、殴る蹴るは出ますね。

原田強いんですよね。ほかには飛行……これは翼が生えてくるという。

朝比奈本人の姿のまま背中に蝙蝠の翼が生えて飛ぶというのと、蝙蝠自体の姿に変身するというのと2パターンありますね。

原田これはおそらくその時々で、絵柄としてイケてるほうでという感じで。

—かなり能力の多いキャラクターなんですね。

朝比奈シリーズが進むにつれて、後からどんどん加わっていった部分があるかもしれないですよね。最初は単純で、蝙蝠に変身してくらいのわりとシンプルなキャラクターだったんじゃないかな。

原田それはあるでしょうね。話が進むごとに場当たり的に設定を加えて、状況を切り抜けるために。ちょっと鬼太郎っぽいのかもしれない。ドラキュラのライバルといえばヴァン・ヘルシングですけど、そのヴァン・ヘルシングの子孫か親戚かわかりませんが、親子がいるんですね。初期はその親子と共に行動するエピソードが多いです。ドラキュラと戦ったり。

朝比奈それ、本来ならバンピレラとヘルシングが戦うんじゃないかと思うんですけど(笑)。

原田ルシングの親子が出てきて、アダムっていう息子はバンピレラと恋に落ちるんですけど、コンラッドという父親ははじめ信用しなくて……とかあったと思います。

▲行動を共にするヘルシング親子。サングラスがコンラッド、若者がアダム。

朝比奈もしかしたらエピソードを考える時も、基本的には固まり切っていない設定だから、今回は彼女に何させようかみたいなね。

原田エピソードはかなりバラエティに富んでます。ドラキュラ、狼男、宇宙人、悪魔とか、果ては神々とも戦ったり、事件に巻き込まれたり。

▲宇宙人やロボットとも戦う。

朝比奈異邦人としてのバンピレラにご存知のキャラクターを放り込んだら、どういう化学反応が起こるかなというのを楽しんで作ってたのかもというのはありますよね。エピソードの都度に、何かの事件に巻き込まれて悪いやつや化け物が出てくるという。基本的に流れ者みたいな感じですもんね。

原田アル中のマジシャンと世界中を旅するというのがあって……密室にバンピレラが入って、それに布を被せるわけですね。で布を取るとバンピレラが消えて蝙蝠になっているというマジックで。それが受けて大成功するとか、ちょっとコメディですよね。モンスターモデル事務所に所属して、B級映画にホラークイーンとして出演したりというのもあって、作り手の趣味がもろに出てます。

朝比奈かと思うとそのB級映画に出るために飛行機乗ったら墜落して、瀕死になるけど他の乗客の血を吸って生き延びるなんて陰惨な話もあって。その幅の広さというのは魅力ですよね。少なくとも正義の味方ではないんですよね、仲間を助けたりはするけれど、地球の平和を守るために戦うお姉さんではない。

原田そう、例えば恋人のアダムが窮地に陥ると必死になって助けに行ったりするんだけど。でもそれは正義とは違うんですね。

僕の持論なんですが、大体五つの要素があればそれはバンピレラになるんではないかと思いました。まず、一つめが美しい。二つめがセクシー。三つめが危険。なんかこう危ないかんじがしますよね、うかつに手を出したらやばいみたいな。で、四つめが強い。五つめが神秘的と。なんかどこか謎めいた雰囲気があるっていう要素があれば。

朝比奈それであのコスチュームであれば、バンピレラ。様々な書き手がいる中で、根底にあるものは確かにこれらだと思います。逆に言ってしまえば、絵を見たそのままといえばそのままですよね。

原田そう(笑)。今回立体化を担当することになって、色々読んだり調べてバンピレラについてそれなりに詳しくはなったと思うんですけど。正直詳しく調べる前とあとで、バンピレラに対する印象は特に変わりませんでした。

朝比奈いかに秀逸なデザインなんだろうということですね。

原田そうです。だからバンピレラをこれで初めて知るという方は、もちろん深く入っていってもいいんですが、なんとない魅力を感じるだけでも十分なんだなというのは思ったところです。

朝比奈名前とこの姿さえ知っていればいいですよ、というハードルの低さはありますね。あっそれ見たことある、バンピレラでしょ! これだけでいいというのは確かに。

原田バンピレラを知ってもらおうという主旨なので、この場の存在意義が怪しいですが(笑)。