画業40周年を迎えた漫画家・上條淳士の「線」にフォーカスした作品集。無駄を排除したストイックな線で描き出される画面空間は、巧みな構図と、細密な描き込みと大胆な省略のコントラストによって独特の緊張感が生まれ、スタイリッシュな人物描写も相まって多くの人を魅了してきました。「線」が上条氏の表現の要であることはずっと変わりませんが、その線のありようには少なくない進化と深化があります。特に展示活動に力を入れ始めてからは、ペン入れを行わず鉛筆線でフィニッシュしたり、デジタルによる効果を与えたりと表現の幅が広がっています。本作品集は、ラフスケッチと下図、完成形(ペン入れありとなし)まで、プロセスごとの線の違いを対比するなど、「線」を味わい尽くす内容です。作家自身による、線を中心とした表現論・技法解説も貴重です。
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