史上最も美しい怪物、“ビッグチャップ”。
スイスの芸術家・H.R. ギーガーの手によって産み落とされたクリーチャーは、しかし『エイリアン('79)』劇中においてその全容をはっきりと確認することはできませんでした。公開当時、衆目に触れた唯一の“ビッグ
チャップの全身の姿” ――それが、メイキングブック『THE BOOK OF ALIEN』の最後のページに掲載された一枚の写真です。
言い知れぬ妖しさを放つこの「腰を屈めたポーズ」は当時のファンに強烈なインパクトを与え、現在に至るまで“もっとも有名なビッグチャップの全身写真” として愛され続けています。
「このビッグチャップを極限まで再現したい。それも、映画製作当時の空気を感じられるほどの精密さで」
そんなエイリアンへの極端な愛から始まったプロジェクトのために、業界屈指のエイリアン・マニア4名で構成されたチームが発足。当時撮影された写真の数々を高解像度の状態で入手し、全身をくまなく検証。撮影時の状態が不明な部分については独自解釈を極力廃するため、4名が所有する膨大な資料から、徹底的に事実だけを洗い出しました。さらにスイスの「H.R. ギーガー・ミュージアム」、ドイツの「フィルム・ミュージアム」へ現地調査を敢行。撮影に使用されたスーツ等を改めて実地検証することにより、数々の新たなデータを採取することに成功したのです。学術的とさえいえる地道なアプローチから得られた新事実の数々を基に、藤本圭紀氏(造型・彩色)が、発見と驚きにみちたディテールの全貌を1/3スケールで完全再現。
エイリアンへの愛と偏執的なこだわりが成し遂げた、あなたの見たことのないビッグチャップ・スタチューが今、ここに誕生しました。
▼独自の解釈はしない。目指したのは、究極の“再現”
こだわったのは、写真のエイリアンを「再現」すること。想像で補う部分を極限まで廃しました。唇の皺の一本一本、全身の蛇腹の歪みや引き攣れ、確認できるパーティングラインにいたるまで、偏執的ともいえる検証を重ねています。究極の再現を謳うからには、そこに一切の手抜きなどあり得ません。
▼全身にわたって貫いた、“本物”のビッグチャップへのこだわり
「再現」というコンセプトを貫くため、頭から尻尾の先まで、全身すべての箇所において検証と考察を行っています。漠然と造形した部分は、一箇所たりとてありません。既発の商用立体物はいっさい参考にせず、当たり前と見なされている事柄すらもいったん忘れ、プロジェクト・メンバー4人の所有する膨大な資料から得られる事実のみを洗い出します。殆どの写真で影になって見えない顎の下、あるいは屈んだときの背中はどうなっているのか。正しいフードの形状とは。首元から伸びる細長い皮状のモノの正体とは。そして、どんな写真にも写っていない足の裏とは……? あらゆる謎の正体を解き明かし、全身すべて――飾ると見えない足の裏までも――を「再現」したビッグチャップ・スタチューは、世界初です。
▼スイス・グリュイエール「H.R.ギーガー・ミュージアム」での現地調査
実物の持つ迫力を肌で感じることは、極限の「再現」には必要不可欠でした。そこで、「H.R.ギーガー・ミュージアム」(スイス)へ赴き、調査を敢行。収蔵されているH.R.ギーガーみずからの手によるビッグチャップの全身立像、および映画で使用されたアップ用メカニカルヘッドを、二日間にわたり実地検証。「歯の詳細な形状」「指に貼り付けられた爪の材質」をはじめとした、写真では決してわかり得ない貴重なデータを採取しました。
▼ドイツ・フランクフルト「フィルム・ミュージアム」での現地調査
さらに、「フィルム・ミュージアム」(ドイツ)に収蔵されている、映画で実際に使用されたスーツも実地検証。美術館の協力を得て600枚を超える写真を撮影し、これまで明らかになっていなかった驚愕の新発見を多数、採取することに成功しました。これまではただ推測するほかなかった仮説の数々にも、裏付けが得られています。
▼高解像度写真が教える、新たなディテールたち
40年前にビッグチャップのスタジオ写真を撮影した写真家本人と、直接コンタクトを取ることに成功。A3サイズ相当の高解像度写真を譲り受け、これまでの低解像度写真では判別できなかった細部が、次々と明らかになりました。
その他にも、多種多様な写真を高解像度の状態で入手し、当時のコンディションの徹底検証をおこなっています。
▼チーム・メンバーは全員、筋金入りのエイリアン・マニア
本プロジェクトは、業界屈指のエイリアン・マニアにより構成された、いわばドリーム・チーム。“屈みポーズ”撮影当時(1978年10月)のコンディションを徹底検証するにあたり、どうしても写真に映っていない部分が出てきたときは、プロジェクト・メンバー4名が所有する膨大な資料の数々をひたすら再検証。すると、そこから思わぬ発見に至ることもしばしば……!この4人でなくては決して辿りつけなかった、真実への道が開けました。
▼写真と“同じ”であること。その困難さ。
本スタチューの本懐は、写真と「同じ」ポーズを造るということ。たとえデータが出揃ったところで、それを立体物として成立させなければ意味がありません。細心の注意を要するディテールから、ギーガー・ミュージアムで感じた独特の気配にいたるまで、造形への技術とセンス、両方が問われます。その課題を解決したのが、原型師・藤本圭紀氏。たぐいまれな造形力を有し、ビッグチャップへの知識と情熱も最高峰をほこる氏を迎えることで、この最大の難関をくぐりぬけることができました。
▼エイリアン・プロジェクトの道のり
このスタチューには、語りつくせぬほどのこだわりが詰まっています。そのひとつひとつを、少しずつですが、語りうる限りご紹介していきたいと考えています。ぜひ「ALIEN PROJECT BLOG」をチェックしてください。
>>【ALIEN PROJECT BLOG】
今回の調査にあたり、本当にたくさんの方のご協力を頂きました。かかわってくださったすべての方に、言葉に尽くせぬ感謝を捧げます。
ドイツ・フィルムミュージアムの学芸員の方は、我々の調査の趣旨を説明したところ、にやりと笑ってこう言って下さいました。
「素晴らしくクレイジーだ。君たちの成功を心から祈っているよ」。
一介のエイリアン好きが夢を見て、仲間をみつけ、集い、世界中の人々を巻き込み、遂に誕生した究極のスタチュー。それがこのビッグチャップです。
夢の結晶を、どうかあなたのその目で、確かめてみてください。