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誕生と移り変わり

—次はコミックの変遷についてなんですが。大きく分けて3つに分かれると。

朝比奈最初が、ウォーレン・コミックス。

▲ VAMPIRELLA #1 (1969)

原田ウォーレン・コミックスですね。スタートしたのが1969年ですからもう48年前……50年近く昔ですね。初期の「バンピレラ」誌はホラーアンソロジーで、恐怖マンガのオムニバスだったようです。で、話の最初と最後にバンピレラが出てくる。わかりやすく言うと「世にも奇妙な物語」のタモリです。

朝比奈タモリの原型と言っていいかもしれないですね。

原田そうかも。ウォーレン・コミックスは「クリーピー」や「イーリー」などのホラー雑誌、あとは「フェイマス・モンスターズ」というホラー映画専門誌を出していて、「バンピレラ」もその流れに乗った姉妹誌的な位置づけで出発したようです。

原田その後1974年に仕切りなおされて、バンピレラを主役に据えたストーリーが本格的にはじまったようです。

朝比奈人気が出たということなのかな。そのへんの事情はわからないけども、そうなんでしょうね。

▲74年の、仕切り直し第一号。

原田それから、ここでちゃんと名前を挙げておかないといけないのが、フォレスト・J・アッカーマンという人の名前ですよね。

朝比奈有名なSFの大家。映画のプロップやレプリカを膨大に集めたお屋敷の「アッカーマンション」が有名ですね。ものすごいコレクターで名を馳せてました。

原田本職は編集者ですかね?

朝比奈「フェイマス・モンスターズ」の編集者ですよね。「スターログ」に載っている「アッカーマンション」の写真を見て、やっぱりひとつの憧れではありましたね。それで、この方が初期のバンピレラのシナリオを書いているんですね。なのでアッカーマンとトリーナ・ロビンスという人が、どうやらバンピレラの生みの親であるらしいですね。ウォーレン版を一冊持ってきたんですけれども(取り出す)。

原田これは78年の本ですか。僕が生まれた年ですね(笑)。けっこうボリュームのある本なんですね。

朝比奈そうですね、これはコミックの部分だけで、ええと……68ページありますね。もしかしたら号とか時期によってボリュームが減ったり増えたりというのはあるかもしれないけども。で、これが112号出たということですね。

原田1969年から1983年までですね。83年で一旦終わったというのが、なぜかというとウォーレンコミックスが倒産してしまった。

朝比奈で、その後ハリスコミックスに移行するという感じで。ちょっと間が空くんですね。

原田権利が移ってしばらくはウォーレン時代の再出版をしていたんだけど、88年からオリジナルのストーリーを展開するようになったとあります。

朝比奈ハリスコミックスに変わってから、またバンピレラのキャラクターに変化が出てきたんですね。

原田代表的なエピソードだと、まず凄く神話的要素が加わって、なんと聖書の話に入っていくっていうのがあるようですね。アダムの最初の妻リリスの娘という内容に設定が変更されている。なんと記憶を消されて女教師としてエラ・ノルマンディという名前で10年間学校に勤務していたと。

朝比奈仕切り直しみたいな形ですよね。ただまあ吸血鬼のお姉さんみたいなところはもちろん生きるんだけども、ドラキュロン星からやって来た宇宙人でみたいなところは一回無しにして、ということなんですね。

原田女教師として勤務していたんだけれども、ある悪魔によって記憶を取り戻すことになると。で、リリスは楽園を追放されたあと何千もの悪魔を地球に呼び出す。で、バンピレラというのはリリスの娘と思いきや、実はリリスを倒すために神が創った戦闘マシンだったのだ、という風に再設定されたようです。この辺は実際にコミックを読めてはいないんですが。

朝比奈なるほどねえ。

原田これを見るとバンピレラのデザインそのものにかなりの変更が加えられて、当時の流行りの感じになっているイメージですよね。ウィッチブレイドみたいな。

朝比奈ちょっとアーマー的な、戦闘的なものにね。これの人気がどうだったのかのはちょっとわからないですけどね。もしかしたら、根っからのファンに取っては「これはちょっと違うんじゃない?」っていう意見もあったかもしれないですよね。

原田かもしれないですね。ウィッチブレイドとこんなふうに絡んでいるイラストもあるので、時代だったのは間違いないんでしょう。

朝比奈コスチュームとかってのは凄い強いアイコンというかアイデンティティとして、バンピレラをこう変えるのはどうなのって思っちゃうんだけどな。ただ聖戦という話になってくると、かなりそのバンピレラ自体に目的みたいなものが出てくるから。

原田そうですね。ウォーレン時代とは全然趣きが変わるという。強大な敵として、リリスというのが設定されて……。まあ、そればかりではないんでしょうけど。

朝比奈特殊な感じはしますね。この日本のコミック風なのも凄いですね。

原田色々試行錯誤してたのかもしれないですけど、当時MANGAっていうのをよく聞きましたから、これもまた流行りだったんだと思います。で、ハリスの時代を経て……。

朝比奈今のダイナマイトコミックスになると。

原田そうです。ダイナマイトは2010年にハリスを吸収したようです。

朝比奈その後になんか裁判があったんですよね、確か。

原田ホラー雑誌ファンゴリアの編集長が、ハリスからバンピレラの権利を買ったと発言したんだけども、ハリスコミックスはコミックを出し続けていて……と何だかあやふやな時期があったみたいですね。

朝比奈アメリカって契約社会だし、そういうところはカチッとするように思うんだけど、一部暴走したり誤解によるゴタゴタって時々出たりしますよね。

原田ウォーレンがハリスに裁判を起こしたというのもあったらしいですね。ウォーレンが倒産したのが83年なんですけども、99年に元社長のジェームズ・ウォーレンが「クリーピー」と「イーリー」の権利を改めて再獲得をした後、ハリスコミックスを相手にバンピレラをめぐって裁判を起こしたと。しかしハリスは97年から2000年代の間にバンピレラ関連のコミックをいくつか出版し、更にウォーレンコミックスの復刻版を発売したりというのがあったようで。

朝比奈これだけ散々ゴタゴタがあってもまだ消えてないというところ!しぶといわぁーっていうか(笑)。 キャラクター、コミック含めてなかなかしぶとく残っている。今でも人気があるというのは、それほどまでに愛されているキャラクターなんだなっていうのがわかりますね。